第三回まつもと一箱古本市 その1


齢四十を越したが、いくつになってもはじめての経験というものはまだ存在するわけで、このはじめての経験にトライできるかどうかが、若いか若くないかの違いなのかとも思う。

ただ、はじめての経験というやつは、いくつになっても上手くいかないことの方が多いわけで、それを多く経験で知っているからこそ若くないわけでもある。

今回はじめて「一箱古本市」というイベントに松本で参加してみた。

いつかは悠々自適に古本屋家業を……、という夢の第一歩なわけであります。

当日のパンフ(らしい。出展者には配られなかったので確かではないですが、HPより借用)

まず、一箱古本市というものを、わたしが知っている限り説明してみたい。

いつ、だれが、どこで始めたのか詳らかではないし。よく知らないです。ただ、ツイッターで「一箱古本市」と検索すると、最初に始めた方のツイッターにヒットするようなので、それほど古いものではないだろうと思われます。

人集めとして手軽さもあって、全国各地でそれぞれ個性的な雰囲気をもって開催されているようです。

ちなにみ、来週14日、15日と、安曇野市穂高の穂高神社で行われるイベントでも開催されるそうです。

玄人、素人、引きこもりこもごもが、自分の所有する古本を持ち合って交流し合うというイベントになります。

満を辞してわたしも参加させていただきました。

 

その1 雑音が途切れる怖さ

前日からの雨模様により外での開催がなんとも微妙なうちに当日の朝を迎えました。けっこう小心者なのがこういうところでバレてしまうのですが、駐車場が埋まってしまっては、との心配により。集合9時のところ7時半には松本入り。

当日は松本ソバまつりも開催されていました。ソバ最近食べてないな……

しかし、雨あがり、広場での開催が決定。

じつをいうと、わたし自身は室内での開催の方を望んでいた。始めての出店ゆえ、雨対策まで気が回らずにいた。正直テンパっていて、雨だというのに傘すら忘れコンビニで割高なビニール傘を購入。しかし、結局雨あがり使用せず。

正直不安におびえながら会場まで荷物を運ぶ。段ボール箱ふたつ。この運搬についても他の諸先輩方は色々と工夫されている。ひとはこ、というくらいなので、だいたい箱に入れて出店する。この箱は売り場にもなるし、運搬のための道具にもなる。一箱といっても厳密に規定されているわけではないので、みな様々であり個性が出ている。旅行用のトランクを運搬兼店舗にしたり、ちゃぶ台までもってきていた方もいた。

わたしも当初は運搬用にもってきた箱にいれて売り出そうと思っていたのだが、よく考えてみると、在庫にストックするための箱がない。さらにいうと、アスファルトは先ほどまでの雨で濡れている。直に置いておくと染みてきて本がダメになる。すると、シートが足りない。これは困った。

右往左往しながら、まわりの方々を参考に座るために持ってきたシートで出店風に並べることにした。

完成図。かえるBOOKS 初出店の図。

よかったのが外だったため想像以上に広いスペースが確保できた。これは今回三箇所に分散して行われたことも良い方に傾いてくれた。となりに出店していた「やつはみ」さん(どうも相手の名前の呼び方をどう呼んでよいのかよくわからない)が、若いのだがベテランで、なんと第一回まつもと一箱古本市の主催者でもある。このやつはみさんにいろいろと教えていただけたのが非常に助かりました。この方は松本で「やつはみ喫茶読書会」を開いていたり、高遠のブックフェスにも関わっていたりと、見かけによらずエネルギッシュな方でした。今回初出店で楽しめたのはこの「やつはみ」さんの隣に出店できた幸運が大きかった。ありがとうございました(唐突ですが)。

さて、と、気合を入れていよいよスタート。

接客の基本はまずは「笑顔」

これが案外緊張する。お客さんはソバ祭りの影響もあってか、なかなかのもの。緊張をとるためもあるが、できるだけ途切れずひっきりなしに喋り続ける。

そして笑顔。

不思議なもので、接客や人付き合いは苦手、などと高倉健風に言っていたわたしも、無理矢理にも喋っているうちに、だんだんと興に乗ってくるから不思議だ。

そして笑顔。

話題に困った時は、天気のはなしと、「お腹空きましたね」と愚痴ればなんとかなるものである。最初はそういうものである。

古本市だけでなく、ミニコンサートも一緒に行われていた。他会場では読み聞かせや、消しゴムハンコのワークショップもあり、なかなか楽しげな雰囲気。

ウクレレ弾いてました。

 

それでも、時折喧騒が止み、ふと、誰も喋らない、雑音もない、まったくの無音の状態が訪れることがあるから不思議だ。

日常は気づかないだけで、音に溢れている。でも時折、ふっと、音のない無音の時が訪れる。偶然そんなことがおこる。

たぶん、わたしたちはそんな稀有な偶然のひと時。それすらも気づいていない。日常とはまあそんな風に過ぎてゆく。

ただ、今日は違うわけで。

こういうお祭り騒ぎの中で、ふと無音に気づく。かつ、それに怯えるわけだ。

慣れてくるということは、こういう気づきにも、気づかなくなってしまうことかもしれないから、こんなちょっとした怯えも、悪くはないかもしれない。

初心者であるわたしは、ほんの少し無音に怯えながら、お祭り騒ぎのなか喋り続けるわけである。

 

あれよあれよと時間は過ぎて、なんだかんだでお昼をまわる。

カミさんと娘が午後からは店番を手伝ってくれるはずなのだが、現れる気配なし。

朝、家を出る時食べたのが最後なのでかなりお腹が空く。お腹が空くと腹が立ってくるもので、腹を立てても腹は満たされないくせになぜそんな無駄なことをするのか不思議なのだが、とにかく腹が減ると腹がたつ。

たぶん顔に出てたと思う。

こんなときのための店番を頼んだカミさんと娘は来ない。

腹をすかしつつ、その2へ続く。

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